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写真集を買う年

晴れの日が続いている。朝の日射しはくっきりとした影を作る。

11月下旬、台湾滞在中に写真集を多く取り扱う書店を見つけた。
ホテルから少し離れたところにある大型書店まで歩いてみようと思い、
ガイドブックの地図をメモ帳に手書きで写し、
それを頼りに歩いていたら仁愛路という大きな通りに出た。

自分が書いた地図があまりに正確だったせいか出たい通りとは違う通りだったが、
方向はまあ大体合っているようだったのでそのまま歩いていると、
「亜典藝術書店」という看板が目に留まった。

本来行こうとしていた書店より大分コンパクトだが、芸術書店という名前が気になった。
芸術、建築、設計、などと書いてある中に「撮影」の文字もあったので、
ここで出会ったのも何かの縁と思い立ち寄ってみることにした。

階段を下りて地下にある店に入ると、
店内には「PHOTOGRAPHY」という看板が3カ所くらいぶら下がっていて、
各棚には写真集がこれでもかというくらい並んでいた。
行こうとしていた大型書店よりも品揃えが豊富だ。
こんなに写真集がある本屋って日本だとどこになるだろう?と考えたが、
都写美の書店くらいしか思いつかなかった。多分代官山の蔦屋より多い。

店内を見渡してみると、店内にはぼくとレジの女性の二人しかいない。
その女性もしばらくするとどこかに消えてしまい、ぼく一人になった。

どれどれと見回りをするように棚の一列一列を眺めていると、
置いてある写真集の6割近く(もっとかも)は初めて見るものだった。
自分がいかに写真の世界を知らないかがよくわかってしまった。

これ知らないの?これも?えー、キミだめだねぇ。
そんな冷ややかな声が自分のまわりを囲っている写真集から聞こえてきそうだ。

知らないものが多かったせいか、あるいは一人静かに写真集を手にすることができたからか、
その店で写真集を見るのは楽しかった。
モノクロでもカラーでも、新しくても古くてもよくわからなくても面白いと感じた。
硬い表紙に両手で持つとずしりとする重さ。開いたときの本の匂い。
そうしたものに魅力を感じていた。

時間はあっという間に過ぎ、個展の会場に向かう時間が迫ってきた。
結局1時間ちょっとの間、ぼくはその書店を独り占めしていた。
そしてもっと色々な写真集を見たい、できれば買いたいという気持ちが残った。

とは言っても写真集は意外と値が張るものも多いので、
ほいほいと好きなものを好きなだけ買うことはできない。

でも月に一冊くらい買うペースならなんとかなるのではないだろうか。
そうだ、とりあえず2013年は「月に一冊写真集を買う年」と定めることにしよう。
よく選び、吟味した上で買う。理性的に、スマートに買う。
一年後の年末、選び抜かれた写真集12冊が本棚に増えている光景が目に浮かんでくる。
個展会場に向かうMRT(都市鉄道)の車内でそんなことを考えていた。

帰国後、さっそく情報を得るために「IMA」という写真雑誌の購読をしてみた。
ついでにニュースによると円安の兆しがあるようだったので、
深夜にアメリカのアマゾンで買いたかった写真集を注文した。
いきなり月に2冊買ってしまっているように見えるが、まだ2012年なので問題ない。

来年からはスマートな買い物をする自分の姿がはっきりと見えているから心配は無用だ。
情報収集とか円安とかボーナスとかつきあいとか接待とかみんな持っているからとか、
そういうことにいちいち左右されることはきっとないので何も心配はいらないと思います。

プロフィール

Author:Daigo IZUMI /泉大悟
Photographer. 
モノクローム写真が好きです。

Website
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