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早朝歩く

以前お薦めされた映画「世界最速のインディアン」を見る。今年見た映画で一番よかった。なんとなく「ストレイトストーリー」を思い出す。一生に勝る5分。

ある朝目覚ましがなる前に目が覚めた。時計を見ると4時50分。窓の外は思いのほか明るい。眠気はあまりなかったのでそのまま起きて早朝の町を歩くことにした。Tシャツに薄いシャツを一枚、靴下はいらない。寝癖を帽子で隠して10分で支度を終える。カメラを首から提げてフィルムをポケットに入れて玄関を出ると風がひんやりとしていた。

昨晩強い風が吹いていたせいか空が青い。真横より少し高い位置から太陽が見えた。家や木の影が長く伸びている。冬の日中くらい明るいのに人の姿は無い。住宅街の道の真ん中を歩く。普段の風景と何かが違って、建物に反射した光や淡い影が所々で揺れていた。家から徒歩数分の範囲をゆっくりと歩いた。

最初のうちは明るい住宅街で写真を撮るのに少しためらう気持ちがあったが、まったく誰も歩いていないので次第に気にせずシャッターを切るようになった。早朝の町ではシャッターの音がやけに大きく感じた。もし撮っていて誰かに声をかけられたらなんて言おうか考える。朝の町を撮っていますとでも言えばいいのだろうか。

歩いているとかすかにお腹が空いてきた。近所のパン屋のことを思い出す。うちの近所には歩いてちょっとのところに美味しいパン屋がある。確か6時くらいからやっていたはず。ぐーぐー鳴るお腹の期待に応えるべくあとで寄ると心に決める。しかしお金を持ってこなかったので一回家に帰らなければならない。ポケットにお金が入っていないかと5つのポケットを探してみたが鍵とフィルムがあるだけだった。

仕方なく1本を撮り終えたところで家に進路を家の方向にとった。さっきまでは太陽を背中に向けて歩いていたが今度は朝の光を正面から浴びながら戻る。まぶしい。近頃昔に比べて日の光がまぶしく感じる。帽子のつばの先に手を添えて歩く。

6時を境に何かが変わった気がした。太陽は高く上り光量も強くなった。明るい所と暗い所の差がくっきりしてきた。人の姿も増えてきた。夜明け、早朝という時間から朝に変わった気がした。するととたんに写真を撮らなくなった。今の時期だと日の出は4時半くらいらしい。もう少し早く起きて薄命の頃から歩いてみてもいいかもしれない。

わずかにお金をもってパン屋に行くと、できたてのパンがずらりと並んでいた。食パンを買いたかったがまだ切られていない状態で並んでいる。店の人に切ってくれるか聞くと焼きたてで柔らか過ぎるので切れないらしい。第二候補のクリームパンとコロッケロールを買って帰る。帰りがけ、ほのかに暖かいパンの袋を持ちながら、一斤まるごと買って柔らかいうちにちぎって食べてみるのもいいかもしれないと思った。


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プロフィール

Author:Daigo IZUMI /泉大悟
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