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カメラマンと呼ばれて

この冬は湯豆腐をよく食べている。

ここ一年ほど、仕事でとある保育園に通って撮影をしている。
季節の行事ごとに出向き、園児たちの様子を撮影するというものだ。

今年度はすべての行事に参加してきた。
運動会、お泊まり会、発表会にクリスマス会。
年間の行事を撮っているうちに、年長の子の顔は大体覚えてしまった。

彼らはぼくのことを「カメラマン」と呼ぶ。

「カメラマン、写真撮って」
「カメラマン、写真見せて」
という具合に。

「カメラマン」という単語を覚えてくれてよかったと思うが、
カメラマンが何をする人か、いまいちわかっていない気もする。

というのも、
「カメラマン、何しに来たの」
「カメラマン、何で写真撮ってるの」
と聞いてくる子も多いからだ。

カメラをぶら下げたぼくの姿形に「カメラマン」という音をあてているというか、
多分先生がカメラマンと呼んだからそのまま覚えたのだと思う。
一応聞かれる度に「きみたちの写真を撮るのが仕事だ」と伝えているが反応は薄い。

撮影していると声をかけてくる。

「カメラマン、おはよう」
おはよう、と写真を撮る。

「カメラマン、みかん剥けない」
そうかそうか、と写真を撮る。

「カメラマン、靴下がない」
そうかそうか、と写真を撮る。

「カメラマン、逃げるな!」
...いつの間にぼくは逃げ腰になっていたんだ...!と強気で写真を撮る。

「カメラマン、うんちふけない」
...!これはさすがに先生を呼んだ。

色々な子がいて毎回おもしろいのだが、あるとき
「カメラマン、見て見て」
と言ってダンボールで作ったカメラを向けて来た男の子がいた。
それは印象的な出来事で、写真を撮るよりもまず彼と握手でもしたい気持ちになった。

3月になると卒園式が待っている。
今の子たちにカメラマンと呼ばれるのも、あと一回だ。



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プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
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http://www.dizumi.com/
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