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Tシャツを処分する

夏が終わりに近づき、涼しくなってきた。

夏が終わる頃になると、衣類の痛みをチェックする。タンスの中はチームみたいなものだ。様々な服が力をあわせてぼくの外見を作っていく。タンスのオーナーであるぼくは、まあ球団オーナーみたいなものだ。

我が球団の基本的な方針は、相当痛まない限り戦力外とはしない。毎年同じような服を着ているから、デザイン的にいまいちだから捨てる、ということもない。擦り切れたり着るという機能が損なわれてしまった場合に初めて処分する対象となる。

ここ数年新しくTシャツを買った記憶がない。みな数シーズンを乗り越えてきた猛者たちだ。しかし今年はシーズンが終了に近づくにつれ、故障者(痛みが目立つもの)が続出した。

暗室で着たせいか薬品がついて変色したもの、微妙に伸びてくたびれてしまっているもの。見た感じのダメージがあまりないものでも、なんとなく生地が薄くなってきているようなものもある。

何年も着るのはいいが、新しいものを補充しないとチームの高齢化が進んでいく。Tシャツに限らず、シャツや靴もそこには含まれる。そしてあるとき限界をこえ、雪崩が起きるかのように一斉に着ることができなくなる。まるで示し合わせたかのようにせーので着れなくなる。ということが大体5年に一度起こる。

数日前、随分長いこと着ていたTシャツの右脇に穴が空いていることに気付いた。二ヶ所穴が空いていて、擦り切れてしまっているようだった。正面から見ると気づかないが腕をあげると穴が見える。小さな穴だが、服は穴が空くと途端に貧乏くさく見える。穴が空いても許されるのはデニムくらいだ。

もういつ買ったかもわからないTシャツ。現役を引退をして(外で着ることはなくなって)数年といったところ。今は球団職員(部屋着)として第二の人生を歩んでいたが、まさか働けなる日がこんなに早く来るとは。残すか、捨てるか。

補修をするなりしてもう少し働けないか考えてみたが、手にした穴の空いたTシャツにはもう覇気がなく、ぐったりしていた。

ぼくは引き止めることをやめ、おもむろにTシャツを脱ぎ、そのままゴミ箱に入れた。長年着てきたものを捨てるとき、どうにも忍びない気持ちになる。体の一部を捨て去るかのような感覚があって居心地が悪い。未練を断ち切るように丸めてゴミ箱に放り込んだ。

今日、朝から雨が降った。彼は他のゴミとともに我が家を去っていった。もう二度と会うことないだろう。今生の別れだ。降りしきる雨が悲しみをわかりやすく演出している。

暑い夏が終わると嬉しい。しかし秋の訪れはどこかもの悲しい。この後衣替えをするときにまた多くの別れがあるだろう。長年縁の下を支えてくれたものに引導を渡すのはつらいものだが、チーム編成を刷新し、若返りを図るときが来ているのかもしれない。

ただ買い物をしたいだけではない。すべてチームのためなのだ。

プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
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