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マレーシアに行く

今年の冬至は生暖かかった。

少し前にマレーシアに行ってきた。個展が終わったらどこかに行くということと、その時期だけは随分前から決まっていた。

行き先はいつも画伯によって決められる。ぼくも多少は意見を出すが、最終的な決定権はあちらにある。それについてぼくは特に不満はない。思いがけないところに行ける感じがして悪くはないものだ。

画伯は近頃南インド方面に興味が向いているようだった。でも今回は少し気楽に行ける場所がいいということで南インドは選外となった。インドはやはりこう、しっかりと気を引き締めていかなければならないというイメージがある。

インドへの熱はインドから南に離れた島国スリランカに向けられることになり、ガイドブックを読んだりしながら未知なる国スリランカへの渡航の準備をぼちぼち進めていた。ちょうど友人がスリランカを訪れたこともあり、その話を聞くとますます興味を惹かれた。

しかしある時から突然香港にも行きたいよねなどと言い始め、試しに航空券を調べたらだいぶお買い得だったらしく俄然香港熱が盛り上がり始めた。昔見たウォン・カーウァイ監督の「花様年華」のサウンドトラックを押入れから引っ張り出して聴き始める。香港、懐かしい響きだ。

香港といえば香港映画だ。北京語を大陸で学んでいたぼくは、北京語吹き替え版の香港映画を勉強と称して一時期よく見ていた。なぜか学校の授業でも「男たちの挽歌」などの香港マフィア映画を教材として見せられたことがあった。そのおかげで「(彼を)片付けてしまいなさい」とか「(あなたを)八つ裂きにする」といった単語は今でもしっかり記憶に残っている。先生の意図は不明だが、とりあえずぼくは万が一中国でマフィアにさらわれてしまったときも「あ、この人ぼくのことを八つ裂きにしようとしている」と聞き取ることができるようにはなった。

しかしまたある時、今度はマレーシアに行きたいと言い始めた。なんでも画伯の知り合いからマレーシア料理店で透明水彩を使って塗り絵をするワークショップをしないかと持ちかけられたらしい。マレーシア料理店でイベントをやるのにマレーシアにはもう20年近く行っていない…ならば、ということで行き先はマレーシアとなった。

様々な経緯を経て選ばれたマレーシアはいいところだった。訪れたのは首都クアラルンプールと世界遺産ペナン島のジョージタウン、それにイポーという小さな町。

日中の気温は30度を超え、日差しが強い。日の出は朝7時で日の入りが19時。赤道に近い場所は日照時間がほぼ半日になるということを初めて知った。日本的な感覚だとこの気温なら4時くらいから明るくなってほしい感じだ。

マレー系、華人系、インド系の人たちが多く暮らすマレーシアだけあって、画伯の「南インドに行きたい」熱と「香港に行きたい」熱の両方に応えてくれる国だった。朝食にインド料理屋で食事をし、その足で華人の茶室へ行く。華人の強面のおじさんが手にした大きな肉切り包丁は広東語の響きとともに香港映画を思い出させてくれた。

イギリス統治時代の建物も多く残り、昨年訪れた英国の雰囲気を感じることもあれば、華人の豪商が暮らした邸宅では大陸で暮らしていたときのことを思い出したりもした。過去に訪れた国をところどころで思い出す、様々な要素が入り混じった感じはとても新鮮で、マレーシアは思いがけずまた訪れたい国になった。

プロフィール

Author:Daigo IZUMI /泉大悟
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