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プラハは懐かしい

近頃朝方雨が降る。

プラハから戻って一週間ほど時差ぼけがなおらなかった。年々時差ぼけが治りにくくなっているような。

帰国後ヨゼフ・スデクの写真集を見ていたら、プラハ城とかカレル橋といったいわゆる有名どころ以外でも撮影している場所がはっきりとわかる写真がいくつかあった。ともにすごく気に入った場所で、写真を撮ったり画伯がスケッチしたりしていたからそのページを開いた瞬間、思わずおお〜!と声をあげてしまった。

スデクの写真を見る限り、ぼくたちが見た風景は当時(1950年代)とほとんど変わっていない。スデクがそこにいて、大きなカメラを立てて撮影していたかと思うと胸が熱くなる。我ながらなかなかいいところに目をつけたものだ。

こうした70年近くほとんど変わっていない場所が普通に残っていて、そこに人が暮らしているのは羨ましいなーと思う。ぼくが暮らしているところや生まれ育った町の風景は常に変わり続けている。日本は気候や災害、地理的な問題もあって長く建物を残すのは難しいと聞く。ただ建て替えるのが悪いのではなくて、新しくした時に過去の痕跡を根こそぎ取り払って時間的なつながりをぶちっと切り離してしまうような街づくりをしているように見えるのが気になる。

それはどこか記憶が消されるような感じがして時に心が痛む。知っている場所なのに懐かしくない。生まれ育った場所なのに懐かしくない。もうここは君が戻る場所ではないので悪しからず、と冷たくあしらわれているかのようだ。プラハはその変わらなさに驚いたが、日本はその変わりように驚く。

時に町を歩いていると無性に風景が懐かしく感じることがあって、来たこともない場所なのに不思議だった。多分すり減った石段や、昔から補修して色を塗り重ねて使い続けているであろう壁なんかがそこら中にあるので、そういうところに安心感を覚えたのかもしれない。

お城まで続く細い石畳の坂道と、遠くから聞こえてくる教会の鐘を聞いてどっかの日本人が懐かしい気持ちになっていたなんて現地の人にはわからないだろう。東洋人が何を言ってやがると思うかもしれない。画伯はアジアが落ち着く(米が大好きだから)というけど、ぼくはどうもヨーロッパのほうが性に合うみたいだ。パンとイモ大好き。


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窓越しの旧市街広場

プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
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