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七割を引く

木枯らし一号。そろそろストーブを出す。

先日打ち合わせで六本木に行ったとき、青山ブックセンターに立ち寄ると一部洋書がセールになっていた。何かおもしろいものがないか重たい本を漁っていると、JHON SCHABELの写真集「passengers」が突然現れた。

90年代に1000mmの望遠レンズで飛行機の乗客を撮影した作品で、窓の中に見える乗客の姿はどこかこれから宇宙旅行にでも行くかのようだ。買うべき写真集のウェイティングリストに名前が書かれているのだが、その順番が回ってくるにはもう少しの時間が必要だった。そんな本が洋書セールの奥深くに眠っていて目の前に現れた。しかも値段の横には50%OFFの赤いシールが貼られている。なんということでしょう。ぼくは最近何か人の役に立つことをしたのだろうか。

本来この写真集は値段が下がるものではないし、下げるべきものでもない。でもときに企業経営の営みの中で値段を下げる必要に迫られることもあるのだ。

洋書は値が張るものが多い。欲しい写真集はそれなりの値段であることが常だ。それなりの値段であるがゆえに、ぼくはそうした本に対してそれなりに威厳を感じてしまう。遠い海外からやってきました。部数少ないです。増刷しません。品質抜群です。ゆえにこれくらいの金額は支払っていただきたく。という無言の圧力を感じつつ、それなりの覚悟を持って購入に至る。それが欲しいものを手にいれるときの正規のルートだ。しかし今回は違う。ちょっと非合法な入手経路で手にいれるかのような気分だ。

レジに持っていくと店員の男性が値段とセールのシールをチェックする。近くにいた先輩スタッフに確認してレジを打ち始めた。そして「70%OFFになります」と伝えてきた。どうも最終日が近いらしく、セールコーナーは一律70%OFFになっていたようだ。ぼくは最近知らぬ間に何か人類の役に立つことをしたのだろう。

レジの男性から丁重に本を受け取り、店を出る。台風が去った後の秋の青空は実に美しかった。打ち合わせ最高。六本木最高。七割引、最高。

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Author: 泉 大悟 / Daigo IZUMI
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