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ニッコール105mmとニコマート

今年は部屋の中でフリースを着ている。なかなかいい。

縁あってニコンのレンズをいただくことになった。手元にやってきたのは「NIKKOR-P AUTO 105mm F2.5」というレンズで大体50年ほど前に購入したものとのこと。ずしりとした重さとメタルフードの感触が気持ちいい。

さっそくいつも使っているニコンF3に取り付けてみるが、絞りが動かない。故障かな?と思って調べてみるとニコンのレンズには時代にあわせた変更が行なわれていることを知った。長い歴史を持つニコンの「Fマウント」、てっきりどの時代のレンズも共通で使えるものだと思っていた。

1959年 Fマウント開始
1977年 「Ai(Automatic Maximum Aperture Indexing)方式」採用
1980年 ニコンF3発売

今回やってきたレンズは1977年より前のいわゆる「非Ai」のレンズ。ニコンF3はAi後のもの。ということでF3ではこのレンズが使えないことがわかった。そういえばオーナーであるS氏はニコンF2につけて使っていたと話していた。

では1977年より前のボディを見つけたら使ってみよう、と思ったところ実家にニコマートFTがあることを思い出した。父が若い頃に買ったもので、1977年以前に買ったと言っていた。ひょっとして使えるのでは?画伯の個展でちょうど銀座にやってくる両親にニコマートを持ってきてもらう。レンズをつけてみると絞りは何事もなかったかのように動いた。

長年使っていなかったであろうニコマートはシャッターを押すと普通に動いているようだったので、まずは一度テストしてみることにした。夜仕事が終わって誰もいなくなった工場に行き、久しぶりに作業場の写真を撮ってみる。

レンズのフォーカスリングを回してピントを合わせる。ファインダーが暗い。室内も暗い。ピントがよく見えない。小型のライトで被写体に光を当ててピントを確認する。

105mmという焦点距離は初めて。初めてのレンズとボディ。その新鮮さもあってか写真を撮るひとつひとつの作業がとても楽しく感じた。やっていることはいつものF3の時と変わらないのだが、カメラが変わることで生じる「不慣れ」の感覚が「慣れ」を取り除き、新鮮さを与えてくれた。

シャッターボタンを押すとシャッター幕が開く。巻き上げレバーを巻けばフィルムが1コマ分巻き上げられる。フィルムが終わったら巻き上げボタンを押して巻き上げレバーをくるくる回して巻き上げる。カメラの部品ひとつひとつに、撮影に関する仕事がひとつずつ割り当てられている。

半押しするとオートフォーカス起動とか、ファンクションボタンに好きな機能を割り当ててねとか、そういう気の利いたことはできない。でも不便はまるで感じないしむしろすっきりとしていて使い心地がいい。

ハスキーの三脚にセットしたカメラを離れたところから見ると、まるで様々な工作機械の一部かのような立ち振る舞いをしていて、工場内にうまく溶け込んでいるように見えた。金属の質感が強く曲線が少ない。重く、硬く、丈夫。プラスチックを使っているカメラにはない機械むき出しな感じ。デジタルカメラは機械というよりエレクトロニクスやコンピュータの世界から来たものだと改めて思った。その両方を味わうことができる現代は幸せだ。

2時間ほどかけてようやくトライX1本を使い切る。就業中の暖房の暖かさはすっかりなくなり、夜の工場の寒さが身に染みた。さあちゃんと写っているといいのだけど。

プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
Website
http://www.dizumi.com/
Instagram
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