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ある日の暗室

展示用のプリントをながめていたら、一点差し替えをしたくなってきた。気になっていた別の一枚をセレクトした写真の束に入れると引き締まる感じがした。天気もよかったので暗室に行ってバライタにプリントすることにする。

暗室にはいつも自転車で行く。画伯が昔買った赤い普通の自転車。その日はさほど寒くなかったせいか家を出るとき手袋を持っていくのを忘れた。すごく久しぶりに素手で自転車のハンドルを握る。毎年この時期に素手でハンドルを握るようになると春が近いなぁと感じる。

坂を一つ越えるとちょっとした高台に出る。いつもと違い遠くが見えるなと思ったら木々が植えられていた場所が更地になっていた。南東の方角が随分と遠くまで見える。これはこれで見晴らしがよくていいかもと思ったがそこには「XX建設」の幟がパタパタと風に揺れていた。ここにも家が建つのか。

最近ぼくの住む町は人口が増えてきているようで、比較的大きめの住宅がひとつなくなるとそこにぎっしりと小型の家が建つ。駅に近いところには大型のマンションが隣り合うように建つ。空いた土地をこれでもかとうくらいめいっぱい活用して住宅を建てる。少し前に朝の通勤ラッシュの時間に電車に乗ったらぼくが会社員をしていた頃より明らかに乗客が増えていて驚いた。町の様子も暗室に行く道も少しずつ変わっていく。

暗室はストーブをつけなくてもいいくらいの暖かさだった。蛇口をひねりたまった水に温度計を入れると水温14℃。春のよう。春が来る喜びはもちろんあるけど冬が好きな身としては冬が去ってしまう、という悲しみも同時にやってくる。手袋をしなくても自転車に乗れる気温はありがたいがもう少し冬も味わいたいと思う。

前回バライタにプリントしたときのデータを見ると日付が11月とあった。日付の前には「91」と番号が書いてある。これは91回目のバライタプリントを意味する。いつからかというと、初めてバライタをプリントした時から。メモによると第1回は2010年9月3日。場所はW氏の暗室だ。できあがったプリントの裏側左上角にはその数字を書くようにしている。なのでプリントを見れば何年の何月何日にプリントしたかが一応わかる。本日は通算92回目。8年で92回。

ライトテーブルの上にネガキャリアを置いてチェックするとホコリを見落としやすい。ホコリは白かったり半透明に近い色をしているから、背後から光があたると見えなくなってしまう。そこで最近は黒い紙というか印画紙の箱に入っている保護用の黒い紙の上にネガキャリアを置いてホコリ探しをしている。さまざまな角度から小さな糸くずや塵が付いていないか探すわけだが、この作業にだいぶ時間を取られる。バライタの紙は今アメリカから輸入したもので一枚4~500円するからこっちも手が抜けない。小さな糸くずのために無駄にする印画紙は極力減らしたい。いつもホコリとは真剣勝負。

結局この日は6枚プリントして終了。水洗中、床に寝転んで昼寝。完全な闇の中で眠るのはなかなか気持ちがいい。

展覧会は一週間後の3月13日(火)からです。ちょっと場所がわかりにくいですが、銀座の銭湯「金春湯」のあるビルの4Fです。


泉大悟写真展
「UNDERCURRENT」
2018年3月13日(火)-18日(日)
銀座月光荘 画室3
東京都中央区銀座8-7-5 4F (Google map)
12:00-19:00(最終日は18時まで)

Daigo IZUMI Photo Exhibition
“UNDERCURRENT”
Tue 13 – Sun 18 March 2018
At “GINZA GEKKOSO GASHITSU No.3”
Ginza 8-7-5-4F, Chuo-Ku,Tokyo
12:00-19:00 (13 Nov 12:00-18:00)

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プロフィール

Author: 泉 大悟 / Daigo IZUMI
モノクローム写真を撮っています。

Website
http://www.dizumi.com/
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izumi_daigo/

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