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富士フィルムの薬品を使う

洗って水を含んだカーペットを持ち上げようとしたら背中を痛めた。息ができないほどの痛みだった。まだ痛い。

富士フィルムのモノクロフィルム「アクロス」が販売終了というニュースが少し前に話題になった。コダックのフィルムを使用し、アクロスを使ったことがまるでない身としてはそのニュースに何も言うことはなかった。ぼくにとっては対岸の火事というか、富士フィルムユーザーの差し迫った深刻さや悲哀を感じることができなかった。

水温がとても安定したこの季節、暗室で作業しているときふと気がついた。アクロスは使っていないけど、富士フィルムの薬品たくさん使っているじゃないか…。

フィルム現像に使う定着剤「スーパーフジフィックス」、プリントのとき停止に使う「富士酢酸」、フィルム現像やバライタの水洗に使う水洗促進剤「富士QW(クイックウォッシュ)」、フィルムの水滴ムラを防ぐ水滴防止剤「ドライウェル」。

暗室で写真を作っている人にとって、フィルムや印画紙の販売終了は深刻な出来事だ。ぼくもそれらのニュースには敏感に反応してしまう。しかし暗室作業というのはフィルムや印画紙だけでできているものではない。フィルムや印画紙の現像、停止、定着、水洗その他諸々の作業がある。当然それに関連する薬品や道具も必要になる。

フィルムメーカーがフィルム作るのもう辞めますね、というお話を切り出した。ということは「言うまでもないかもしれませんが、それらに付随する薬品やらなんやらも…まああなたも大人なので全部言わなくてもおわかりになるでしょう」という言葉が背後には隠れているかもしれない、ということを知っておかなければならない。その日はそう遠くないうちにやってくる、ということを今のうちから覚悟しておかなければならない。

考えたくはないけれど、薬品も販売終了となってしまうと結構困る。暗室のあれこれを習ったときからずーっとスーパーフジフィックスや酢酸やQWやドライウェルを使い続けてきて、もうぼくの暗室の、なんというか欠かすことのできない社会的なインフラのような存在になってしまっている。息を吸うように富士酢酸を投入し、息を吐くようにQWで水洗促進している。QWのあの駄菓子のソーダみたいな水色は永遠に存在していなければならない色なのだ。

アクロス終了、の文字にはふーんとしか思わなかったのに、自分が使っているものに関してはこの有様だ。別れの日がやってこないことを切に願う。

プロフィール

Author:Daigo IZUMI /泉大悟
Photographer. 
モノクローム写真が好きです。

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