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イタリアに初めて行く

イタリアに行ってきた。少し長めの15日間。初めてのイタリアなので奮発した。

巡ったのは北イタリア。ミラノ、ボローニャ、フィレンツェ、シエナ、の4都市に滞在した。ミラノでは絵の具メーカーの工場見学、ボローニャはモランディ。フィレンツェはルネサンス、シエナは絵の具の色。というような大雑把な大義名分が各都市の滞在にはあった。

去年プラハに行きたいと言ったのはぼくだったが、今回のイタリアは画伯が行きたい場所だった。絵に携わる人間としては訪れておかなければならない場所なのだろう。実際に現地を訪れると画伯はイタリアがいたく気に入った様子だった。何が気に入ったのか尋ねてみると、「アジアっぽくない?」という。

確かに今まで訪れたヨーロッパの国々はどこかきちんと、整然としているような印象だった。しかしイタリアにはきちんと、というよりは大らかさを感じた。食べ歩きしていたり、個人商店が多かったり、時間に寛容だったりするようなところからそう感じたのかな。あるいはそこら中で煙草を吸ったりしていたからかな。言われてみると一昔前のアジアの感じをどこか感じるものがあった。

そういえば街を歩いているときや美術館で学生時代に石膏デッサンで描いたという彫刻と対面することが度々あった。いきなり「ジョルジョ!」とか「アグリッパ!」とか言うので知り合いかよという感じだった。絵を学ぶ人はイタリアではそんな出来事がしょっちゅうあるのかと思ったらちょっと羨ましくなった。何はともあれ訪れた国の印象がよいのはいいことだ。旅行に来た甲斐がある。

出発前はイタリアに関する本を読んでいた。須賀敦子の本や美術史関連の本を読みながら一夜漬けのようにとりあえず頭の中にルネサンスにまつわる単語を詰めてみた。その中で読んだ内田洋子の文庫「カテリーナの旅支度」のあとがきで、初めてイタリアについたときの匂いについて触れられていた。

引用:ずっと昔、外国の政治家が日本に降り立つや「魚の匂いがする」と言ったのが忘れられなかった。初めて自分が訪ねるとき、イタリアはどういう香りで出迎えてくれるのだろう。決して嗅ぎ逃すまい、と機内から緊張していた。


匂いではなくイタリアの香り、と言っているところに膨らんだイタリアへの期待が読み取れる。ぼくもイタリアの香りを嗅ぎ逃すまい、と思ってイタリアを訪れたのだが、最初に着いたミラノの外に出たときの香りをまるで覚えていない。というのもミラノがなんだか怖い場所に感じられてそれどころではなかったからだ。

夜、空港からのバスに揺られミラノ駅前で降りる。大きな都市の中央駅の周りは大抵安全ではない、という世界基準はここでもしっかり適用されていた。「ああここは怖いところだ、早くホテルに逃げなくちゃ」という変な緊張感とともに後ろを気にしながら逃げるように歩いていた。

最初に感じた、記憶に残るイタリアの香りはホテルに着いて一安心し、窓を開けた時の匂いだ。それは犬のおしっこの匂いだった。画伯の実家で飼っている小型犬の居住スペースの匂いと酷似していた。イタリアは小型犬のおしっこの匂いがする、というイメージが頭に中にしっかりと刻まれた。ボローニャに行っても、フィレンツェに行ってもその匂いはまあ共通していたのでイタリアの匂いとしてぼくのささやかな思い出にはなっている。そんなところもちょっとアジア的な感じがしてしまった一因かもしれない。

今回は事前に頭に入れた情報や土地勘を作るために少し歩きすぎてしまった感があるので、次行ったらもう少しゆっくりと道端に腰掛けたりしながら街をゆっくり眺めてみたい。道行く人の香水の香り、BARで楽しむエスプレッソの香り、パスタにかかったオリーブオイルやローズマリーの香り、駅で男性がふかしていたパイプと葉巻の香り、といった犬のおしっこ以外の生活の中にある豊かな香りを意識してみたい。

須賀敦子も「フィレンツェ 急がないで、歩く、街」というタイトルそのままのゆっくり歩きたまえ、というアドバイスのようなエッセイを残してくれていたのにすっかり忘れていた。むしろ須賀さんが書いてたここ行かなきゃ!と焦って見に行ったりしていたからそのエッセイはぼくにはむしろ逆効果だったかもしれない。

プロフィール

Author:Daigo IZUMI /泉大悟
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