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モランディを訪ねる

イタリアの画家、モランディの作品を見るべくボローニャへ行ってきた。画伯が手配してくれたアパートメントは奇しくもモランディが住んでいたフォンダッツァ通りのすぐ近くで、徒歩3分でモランディの家にいくことができる場所だった。

モランディはボローニャの有名人だから、街中いたるところにモランディの名前やグッズがあるのだろうと思っていた。モランディTシャツ、モランディマグカップ、モランディカレンダー、モランディソフトクリーム、モランディワイン。大小さまざまな個性的なおみやげを想像していたが、そんなものはひとつとしてなかった。有名人には頼らない姿勢なのか。

アトリエのあった家は現在はモランディハウスという名前で予約した人のみ見学することができる施設になっている。特に目立った看板もなく、普通のアパートといった様子で事前に場所を調べておかないとうっかり通り過ぎてしまうほどひっそりとしている。内部は当時のまま、というわけではないようなので今回は見学を見送ったがよく家の近くには歩いて行った。

モランディはよくボローニャの中心部へ歩いて行っていたそうだ。大体歩いて15分くらいだろうか。そんなに大きな街ではないから十分歩いて回ることができる。スーツ姿で歩く、長身のモランディの姿を想像しながら、中心部へ続く道をぼくも何度か歩いてみた。

昔ながらの街並みがそのまま残るボローニャ。街中には柱廊がたくさんあって強い初夏の日射しから逃れながら歩くことができる。早朝、人通りの少ない道を歩いていると柱の隙間から射し込んだ光が古いレンガの壁にあたって独特の形を作っていた。モランディもこの柱に囲まれた道を歩いていたのかと思うと不思議な気持ちになる。行きつけのバールがあったのだろうか。決まって立ち寄るお店があったのだろうか。知り合いと会って声をかけられたりしていたのだろうか。

街中の色を見ていると、それはそのままモランディの絵の色であることに気がつく。壁や柱、屋根や天井などの淡い色。年月が経って褪せたような色。それらはみな絵の中にある色によく似ていた。絵が現実にはみ出してきたかのよう。

アパートの部屋に戻ると背の高い窓から光が射し込んでいた。その光は向かいの建物にほどよく反射したもので、オレンジ色を含んだ光が室内に届いていた。その光もまたモランディの絵にあるような色だった。

モランディは長年ボローニャの自宅にある小さなアトリエで絵を描き続けた画家。ぼくは今そのモランディの家の近くのアパートの部屋にいる。そして目の前にある壁とテーブルにあたっている光と色が絵の色によく似ている。そんな状況を体感することで、モランディは意外と目の前にあるものをそのまま描いていたんだなと納得した。

ボローニャにモランディグッズはいらない。なぜなら街の至る所でモランディ作品の要素をそのまま感じることができるから。彼が生きていた時代と今がしっかりと途切れることなく繋がっている。ボローニャあってのモランディ。どちらかがどちらか一方に寄りかかることはない、良好な関係。

ボローニャを去る前日、夕暮れ時をフォンダッツァ通りで過ごす。学校近くのベンチに座って画伯が絵を描くのを待っている。蚊が寄ってくるのを追い払う。後ろの方から大きな声がして、路地と路地の交差点で若い人とおじさんが何か言い合っている。その声を聞いて窓から顔を出す人たちがちらほら。ふと目の前の建物に広場の名前を記したプレートがあることに気がついた。ぼくたちがいたその場所はジョルジョ・モランディ広場だった。この決して目立たない、あまり人のいない、小さな小さな広場にモランディの名前が残っていることに彼への愛情とユーモアみたいなものを感じた。


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Author:Daigo IZUMI /泉大悟
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