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フィルムケースとパトローネ

展覧会が終わってひと段落したので暗室に入る。春から初夏にかけて、ほとんど暗室に入ることがなかった。いい気候で作業しやすい時期なのに、出かけることが多くもったいないことをした。

お盆が近づき、街が静かになった。家の前の駐車場もがらんとしている。暗室のエアコンは相変わらず壊れたまま。いつか新調する時がくるのだろうか。

エアコンが壊れたままの男は涼しい時間に仕事する。朝5時くらいに起きて7時前から作業。だんだんと室温が上がっていき、温度計が35℃を指す前に作業は終了となる。

冬にイタリアとオランダで撮ったフィルムの一部が未現像のままになっている。その数約40本。ゆっくりめに進めていたら季節は春になり、梅雨になり、夏を迎えていた。

いつもは持ち帰ったフィルムはなるべく早く現像する方なのだで、こんなに長いこと現像しないで置いておいたのは初めてだ。最初のうちは「まだこんなに現像していないフィルムがある。ちょっと贅沢だな」なんてニコニコしていたのだが、次第に「早く現像しないと気持ちが悪い…」という状態になってきた。

説いた問題集をそのままにするというか、答え合わせしていないのに次の項目に進むような感じというか。あまり長い間放置するのはあまり精神的によろしくないようだ。

写真用のフィルムは筒状のケース(パトローネ)の中に入っている。フィルムの現像処理を終えると、パトローネとフィルムを保護する用のフィルムケースが残るのだが、これが捨てられない。使い道は特にもうないのだからほいっと捨ててしまえばいいのだろうけどこれがなかなか捨て難い。

フィルムケースのフタには撮影が終わった日付と場所が書いてある。2019.2.1ミラノ、みたいに。あのときの旅行に同行した仲ではありませんか、カバンの中でひとときを過ごしたではありませんか、あなたは空港でハンドチェックをお願いしてX線から守ってくれようとしてくれましたね、X線は浴びてしまいましたがイタリアはいいところでしたね、なんてフィルムケースとパトローネが話しかけてくるということはないのだが、どうも捨ててしまうのは忍びない。

とりあえず、と印画紙の入っていた大きな遮光用のビニール袋の中に放り込んでおくようにした。枕カバーくらいの大きめの袋だ。ある程度たまって邪魔になったら捨ててしまおう。と部屋の片隅に置いておいた袋が今満杯になろうとしている。

何年分入っているんだろう。数えてみてもいいがかなりの量があるので正直ちょっと面倒くさい。袋の中にコーヒー豆のようにぎっしりとつまったコダックTRI-Xのフィルムケースとパトローネ。溜まったら捨てどき、と思いきや反対にますます捨てがたくなってきているような。集まることで高まるその存在感。

早く涼しくなって欲しいと願う8月上旬。

プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
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