記事一覧

足跡

シャインマスカットがおいしい季節。

だいぶ涼しくなってきたので暗室作業に取り組む。いくつかたまっていたネガからベタ焼き(コンタクトプリント)を作る。

ベタ焼きはその名の通りネガを印画紙にベタっと密着させて作る。36枚撮りのフィルム一本分の写真が一枚の印画紙に小さく並んでいるものだ。一枚の写真は切手サイズくらいになる。

ベタをじっと見る。これはなんの写真だ?ああ、あのときの写真だ。小さな写真を見ながらどこで撮ったものかを確認する。

天地ひっくり返しにして見るときもある。これは意外とおもしろくて、選ぶものが変わる。逆さまに見ると写っているものの意味が伝わりにくくなるので選ぶ基準が別のところに移るのかもしれない。

その中でこれかな?というものを見つけたら大きくしてみる。小さいままだと何が写っているのかはっきりわからない。小さなネガを引き伸ばし機にセットして、拡大する。エイトバイテン(8x10インチ、A4よりちょっと小さいサイズ)というサイズの印画紙にプリント。

これくらいの大きさになるとOKなものとそうでもないものの差がはっきりわかるようになる。遠くに立っている人に近づいてきてもらうような感じ。近づいてきてもらえばどんな顔をしてどんな服を着ているかがわかる。

さて気になったものせっせと大きくしてみたわけだが、残念ながらその多くはボツとなる。

小さなベタ焼きのときはよさげだなーと思っていたものも、大きくしてみると別に面白くなかったり、面白くなくなったりする。余計なものが写っていたり、傷や汚れがついてしまっていたりとボツの原因はさまざまだ。

ボツになった写真はとりあえず印画紙の箱へ。気がつけば100枚入りの印画紙の箱にはボツの写真がぎっしり。ベタ焼きの箱とボツの箱。そんな箱が年ごとに増えていく。

ボツとはいえ、一度はちょっと気になった存在だ。敗者復活の機会もときにはある。ある程度時間が経つと、当初はボツだったものがよく見えてくることもある。前はとっつきにくかったけど今はなんか平気だな、と印象が変わる。

人間関係と違い、写真の方は変化していないからその心境の変化の原因はぼくにある。あのとき、数年前に初めて出会った(プリントした)ときの自分とは何かが変わった。

箱に入ったベタ焼きやボツの写真は自分が歩いてきた足跡のようなもので、現在の自分の足元までしっかりとつながっている。それは雪原に残された足跡のようにくっきりしている。

訪れた場所、出会った人、心境の変化。何かを記録するような写真を撮っているつもりはないのだが、気がついたら自分の足跡がそこに記録されていた。

プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
Website
http://www.dizumi.com/
Instagram
izumi_daigo/

ブログ内検索