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部屋を作る

秋の暗室週間もひと段落。

ここ数年ヨーロッパ旅行に行く機会に恵まれ、旅先の宿やカフェ、蚤の市などで古い家具を上手に使っているのを目にしていた。その影響か、近頃ヴィンテージの家具を買うようになった。海外からやってきたぼくの年齢よりはるかに上と思われる古い椅子や箱など、お手頃なものを見つける度、ちょくちょく買ってきては家の中の雰囲気が少しずつ変わっていくのを楽しんでいる。

ぴんとくるものがすぐに見つかるわけではないので、時間をかけて少しずつ家の中を変えていく。上手に空間を作るのは得意ではないけど、家の広さや予算などの制約の中でぼちぼちと部屋の内部を組み立てていくのは結構楽しい。自分がどんなものが好きで、どういう性格で、どんな時間の使い方をしているのか。そうしたことを考え直す機会になる。

あれをこちらに置こう、これはあっちに置こう、と部屋の配置を都度いじる。使い勝手や生活感からかけ離れすぎないように気をつけながら。つい意味もなく瓶や写真集などを考えなしに置こうものなら後になって「来客のない家なのに誰に対して気取っているのだ?」と気恥ずかしくなる。

しかしここだ!という場所が見つかると気持ちがいいものだ。適切な場所に置かれた物は昔からそこにあったかのように部屋に馴染む気がする。使いやすく、掃除がしやすく、見た目がよくなる場所を追求する。

ぼくはもともと家にいる時間が長いほうだ。画伯も家で仕事をしているため、こちらも家の滞在時間が長い。なので家の中を使いやすく、過ごしやすく、気分よく滞在できる場所にすることは大切だ。

旅行に出ると、泊まった部屋の中で写真を撮ることがある。日本とは違う日射しや建物の質感が作る室内の陰影は時にとても魅力的に見える。

イタリアのボローニャに泊まった時は、あいにく風邪をひいて一人寝込んでいたのだが、色褪せた薄いピンクや黄土色をした向かいの建物に反射した光がその色をまとって室内に届いていた。その様子は部屋の空気の色が刻々と変化していくようで、ベッドから見ていて楽しかった。風邪をひいたおかげでモランディの絵の色は目の前の風景をそのままを描いていたんだと実感した。

フィンランドのヘルシンキにはちょうど夏至の頃に訪れたたため、深夜になっても青白い光が窓際を照らしていた。日中、部屋の奥に置かれた一人がけのソファにゆらゆらと揺れる小さな光が当たっていた。どこからやって来た光なのか気になって外を見渡すと、少し離れた斜め向こうの建物の窓ガラスに反射したものだった。それが風に揺れる木々と分厚い二重窓を通過することで、見たこともない不思議なゆらめく小さなひだまりを部屋の奥深くに生み出していた。

そんな具合で部屋の中の思い出は意外と多い。

できれば自分のいる部屋の中でもそうした感覚を味わえるようになったらいいなぁと思う。ぼくなりの落ち着く空間の基準は「モノクロームの写真を撮るといい感じに写りそう」。果たしてそんな部屋になるかはまあわからないけど、少しずつ落ち着く室内を組み立てていきたいとこの頃思っている。

プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
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