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見つけた写真

古本屋で物色をしていると、一冊の本が目に止まった。「Photo Trouvee」という写真集で、PHAIDONから出版されている。パラパラと見ていると思いがけず気に入ってしまい即購入。いい出会いは突然やってくる。

この本は写真集といっても写真家が撮影した作品をまとめたものではない。Michel FrizotとCedric de Veigyという二人の著者が蚤の市などで探し出した(序文には「救出した」とある)古写真をまとめたものだ。なので撮影者はすべて一般の人。しかもそうした写真を著者は20年以上の時間をかけて集めたという。

載っている写真がとてもいい。とてもいいというかすごくいい。すごくいいというか単にぼくの好みなのか?よくわからないけど何度も見てしまう。

写真は大部分がモノクローム写真で、余白たっぷりに小さく写真が掲載されている。そこにあるのはぎこちなさ、カメラの操作に不慣れな感じ、今のスマートフォンやデジタルカメラのように簡単に正確に写真が写らなかった頃の雰囲気。そして撮影した人が恐らく意図していなかったであろう結果がそこにはある。

「こう写るといいな」という願望(意図)はカメラという冷徹な機械によって捻じ曲げられ、時には否定され、あるいは間違って翻訳される。その予想外の工程を経てできあがった写真が盛り沢山だ。

ピント外れてちゃってるじゃない。せっかくの記念写真なのに顔が写ってないじゃない。フィルム巻き上げ忘れているじゃない。現像失敗しているじゃない。シャッター間違えて押してるじゃない。などなど様々な要素ができあがった写真の上に現れている。

撮影した人やきっちり写った写真が欲しかった人にとっては頭を抱える結果かもしれない。でもその意図、目的から切り離して「単なる一枚の紙の写真」という物として見たとき、その予想外の結果が却っていいと思えることもあるのだ。

撮った人にはわからない、無関係の人が見たときに発見されるその不思議な魅力。序文では「写真がもっともよく伝えるもの、それは意図とその先にあるものとの偶然の出会いだ」と記している。収録された写真を的確にいい表していると思う。

ぼくも旅行中に蚤の市などでよく古写真を探す。でもここに出ているような意図と絶妙な距離で外れた写真を見かけることはそう多くない。そこに20年以上かけて集めたという時間の厚みを感じるとともに、作者に対して尊敬の念を抱いてしまう。

もし蚤の市でこんな写真が目の前にぱっと出てきたら...間違いなくウキウキしてしまうだろう。そしてその日一日が間違いなくいい一日になることだろう。


Photo Trouvee
Photo Trouvee
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Michel Frizot Cedric de Veigy
Phaidon Press (2006-11-14)
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プロフィール

Author:泉大悟 Daigo IZUMI
Website
http://www.dizumi.com/
Instagram
izumi_daigo/

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