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見えなかったもの

自宅のテーブルを探している。かれこれ3年ほどかけて探しているが、これだ!というものが見つからない。あと何年かかるのやら...。

久しぶりに古道具を見に行ってきた。埼玉県の滑川町にあるn.formというお店。画伯が以前大江戸骨董市でその存在を知り、以来何度かお邪魔するようになった。開いている時間は不定期なのでいつもinstagramで開いている日を調べてから出かけている。

山と畑に囲まれたのどかな風景の中にポツンと倉庫が建っている。外見からはちょっと店内の様子は想像できない。中に入るとイギリスやフランス、アメリカなどからやってきた古い家具や道具が所狭しと並んでいる。

色々なものが店内にぎゅっと詰まっているので、見るのにけっこう時間がかかる。毎回平均2時間くらいは物色している。というか店内を見ているといつの間にか2時間くらい経っているのだ。ひと回り、ふた回りと何度も歩かないとしっかりと物が見えてこない。

古い物が並んでいる。それらの物同士は友好的な関係を築きあい、お互いの魅力を引き立てあっている。

テーブルの上に置いてある小瓶に目がいく。するとその小瓶が置いてある棚に目がいかない。棚も商品の一部なのに、お店の中の什器と目が認識してしまうのかもしれない。だからふと離れたところから見た時に、あの小瓶が置いてある棚もいいじゃないか!という発見が遅れてやってくる。そんな仕掛けがあちらこちらにあるから、なかなか時間がかかってしまう。

そして数時間を過ごした後の帰り道、体には海外旅行に行ったときのような感覚が残っている。海外旅行中の、蚤の市やマーケットを歩いた後の感覚。

ヨーロッパの町を歩いていると、蚤の市やガレージセールに出会うことがある。どちらも見かけたら素通りすることはできない。後の予定のことも忘れてつい立ち寄り、おもしろい物はないかとあてのない探し物を始めてしまう。

n.formを初めて訪れたとき、ふと思い出したのはスウェーデンで偶然立ち寄ったガレージセールのことだ。

大都市ストックホルムで慣れない左ハンドルのボルボを借りて街に出たぼくと画伯は、これまた慣れない運転と興奮でくたくたになりながらダーラナ地方はシリヤン湖近くにある、ムーラという街を訪れた。現地の画家の美術館に立ち寄ると、そのすぐ近くに手書きのガレージセールの看板が出ているのを見つけた。

庭と納屋を使ったその小さなセールには、古い家具や自転車などがたくさん並んでいた。こういう誰かが使ったものを他の人が修理したりきれいにしたりして使い続けていく習慣はうらやましいなーと思いながら埃っぽい納屋の中を歩いた。その後ヨーロッパを訪れるようになって、徐々に古いものに出会う楽しさを知っていくきっかけになった出来事だった。

そのときは初めて北欧を訪れたということもあり、こうした古いものを選んで買う楽しさをわかっていなかった。関心が薄かったから目に止まらない物も多くあったことだろう。もし今あのガレージセールに行くことができたら、帰りの荷物に困るくらいあれこれ買ってしまいそうだ。

もしかすると、ぼくはそのときの気持ちを店内で追体験しているのかもしれない。倉庫の中にある古い物の間を縫うように歩く楽しさ。少し埃っぽい匂い。あの日買えなかったもの、見えなかったものを今になって追いかけるように探し求めているのかもしれない。

ここでいつかテーブルにも出会うような気がするのだけど、はたして。

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Author: 泉 大悟 / Daigo IZUMI
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