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トラックブレについて

本格的な夏が来る前にバライタのプリントを少しした(暗室に冷房がないもので)。

いつもどおり掃除をしてプリント作業を進めていく。何枚かプリントしていくうちに、どうもピントがあまいような、ちょっとだけもやっとした写真が何枚かあることに気がついた。

カメラで撮影するときにピントをあわせるときと同様に、引き伸ばし機で写真を大きく拡大するときにもピントはあわせないといけない。印画紙の表面にピントを合わせて、ネガの情報をピチッと正確に伝える。

今回おかしいなと思ったのは、何枚かはピントがきっちりあっていて、何枚かがちょっとだけもやっとしているということ。ピントは毎回合わせているからこういう違いが出るはずがないのだけど...。

原因はなんだろう?うーんと考える。平日の午前中、近くの幹線道路では車が行き交っている。古い建物だから音が結構聞こえてくる。そのとき気がついた。ああ、トラックのせいだ。前にもこれはあったのだけどすっかり忘れていた。

大型のトラックがゴーというけたたましい音を立てて走り去っていく。そのときに建物が揺れているのだ。ごくごく小さな地震くらいの揺れが建物に伝わってくる。

揺れは建物を通って机の上の引き伸ばし機まで伝わってくる。大型トラックが通るとき、引き伸ばし機をよーく見ているとその走り去る振動は引き伸ばし機のライト部分を微かに揺らしていた。

気がつかずそのときに露光をしてしまうと、その振動が写真に影響してくるということだ。

ピンボケ、手ブレ、被写体ブレ。これらは写真用語に普通に出てくる言葉だけど、ぼくの暗室には「トラックブレ」なるものが存在する。困ったものだ。

そういえば昔読んだ写真家の人のエッセイに、「汗ムラ」という言葉が出てきていた。それは夏場、エアコンがない暗室で作業するときに印画紙に汗が垂れてしまったことによりできるムラということだった。きっとそれぞれの暗室にそこでしか通じないような特殊な用語(方言というべきかな)があるのだろう。

今回トラックブレにより、バライタ印画紙が数枚犠牲になってしまった。まあトラックブレに対する注意を怠っていたぼくがいけない。

車の往来が多い時間帯にプリントをするとき、ぼくは頭の中に思い描かなければならない。交差点でしっかりと止まっている車と頭上に光る赤信号を。そして聞き耳をたて、大型車の接近がないことを確認しつつ露光ボタンを押す。それが我が暗室における一つのルールなのだ。

できれば引き伸ばし機に手ブレ補正ならぬトラックブレ補正が付いていると嬉しいのだけど。最近のカメラの手ブレ補正のように、「数段分の強力なトラックブレ補正搭載」とかだったらとてもありがたいと思う梅雨の今日この頃。




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Author: 泉 大悟 / Daigo IZUMI
モノクローム写真を撮っています。

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