宛名のない手紙を出す
Posted by 泉大悟/Daigo IZUMI on
寒波が来ている。
暗室でフィルムを現像。蛇口から出てくる水が冷たい。現像液などの薬品を20℃にするためにお湯を沸かす。ちょうどいい温度になるよう暖めたり冷ましたりしながら20℃にする。
この後、現像したネガをプリントする。目星をつけて、8x10インチのサイズに引き伸ばす。プリントが乾いたら家に持ち帰り、セレクトする。その中から20枚の本番プリントを作る。
写真ができあがったらギャラリーに見てもらう。うまく行けば展示をしてもらうことができる。誰かが見に来てくれる。嬉しい。誰かが写真を買ってくれる。嬉しい。展覧会が終わると、次回の展覧会に向けて作業を再開する。そんなことをここ数年続けている。
暗室で作業をしていると時々、なんだか宛名のない手紙を延々と出しているみたいだな、と思うことがある。
相手はわからないけど、手紙を書いて出す。書いた手紙はいつ、どこの、誰に届くかはわからない。でもいつかどこかの誰かに届くかもしれない、という可能性を感じている。ぼくはその可能性に喜びを感じているように思う。
冬の暗室、フィルムを現像しながらそんなことを考える。
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